なぜ大人の趣味はつまらなくなるのか?「効率厨」を脱却する3つの処方箋
休日前夜。Netflixにズラリと並ぶタイトルを前にして30秒ほどフリーズし、結局何も見ずにYouTubeで「ゲーム実況」をぼんやり眺めて夜が更ける。
念願だったバイクを手に入れ、ヘルメットも新調したのに、いざ休日になると「渋滞しそう」とか「雨が降りそう」などと考えはじめ、結局いつもの道の駅まで缶コーヒーを飲みに行って終わってしまう。
みなさま、心当たりはありませんか?
「自分も歳をとったな」「昔ほど情熱がなくなったな」などと、寂しげに遠い目をするのはまだ早い。
あなたが老いたわけでも、情熱が枯れたわけでもありません。
僕たちが「効率と攻略」を覚えすぎたせいで、自ら趣味をつまらなくしているだけなのです。
例えば、子供の頃はゲームに無限のワクワクがありました。
新しい街に到着すれば、すべての民家に押し入り、ツボやタンスをしらみつぶしに調べたものです。
入れない場所に宝箱があれば「絶対裏に隠し通路がある!」と胸を躍らせて散策しました。
ですが、今の僕たちはどうでしょう。
「あ、ここでボス戦だな」と察し、「ムービー入るな」と読めてしまう。
プレイする前にレビューを確認し、最短ルートを調べ、攻略サイトを熟読してからプレイを開始する。
買ったはいいけれど時間がなくてやっていないゲームがあって、「早くこれをクリアして次に進まねば」と、締め切りに追われる編集者のごとくストーリーを消化する。
自分で試行錯誤して失敗する楽しさを、事前の「最適化」によって自ら放棄しているのです。
効率よく最短ルートでクリアした結果、残るものは「タスクをひとつ片付けた」という虚しい達成感だけ。
これでは、まるで業務報告書を作成しているようなものです。
そして、この「効率厨」はゲームだけに留まりません。
バイクの世界においても、まったく同じ病に侵され始めています。
免許を取りたての頃や、初めて自分のバイクに跨った日のことを思い出してみてください。
目的地などどこでもよかったはずです。
ただエンジンをかけてクラッチを繋ぎ、風を切って走るだけで脳汁が噴出。
道に迷えば「見たこともない景色」に歓喜し、雨に降られれば「うわ最悪だ!」と叫びながらも、どこかニヤニヤしていたものです。
あの頃の僕たちは、間違いなく「冒険者」でした。
しかし、経験を重ねたライダーはどうでしょうか。
ナビの言う通りにしか走らず、インカムから聞こえる音声案内に従い、一切道に迷うことなく、最も効率的な最短ルートをトレースする。
絶景スポットを事前攻略し、映えスポットへ直行し、画角通りに写真を撮り、「よし、行った」とチェックリストを埋めて帰宅する。
「寒そうだから」「渋滞しそうだから」「雨雲レーダーに怪しい影があるから」と、リスクを事前に察知して走る機会そのものをキャンセルする。
いかがでしょうか。
僕たちはいつの間にか、バイクに乗って風を感じているのではなく、「計画通りに無事帰宅する」という安全なツアーを消化しているだけになってはいないでしょうか。
インカムで音楽を聴き、ナビに指示され、危険をすべて察知して回避する。スマートで、賢く、安全な大人の嗜み。
ですが、そこにはかつて僕たちの心を震わせた「未知との遭遇」も、「命を燃やしている感覚」もキレイさっぱり脱臭されてしまっているのです。
僕たちは、もう二度とあの頃のように夢中になることはできないのでしょうか。
大丈夫、解決策は極めてシンプル。
「あえてバカになる」これに尽きます。
いくつか提示しておきますから、謹んでご査収しろ下さい。
① 攻略情報・ナビを見ない
ゲームであれば、絶対に攻略サイトを見ない。
バイクであれば、スマホの電源を切って、紙の地図だけで見知らぬ地へ飛び込んでみること。
道に迷うことこそが、最高のエンターテインメントなのですから。
② 「選択肢」を限界まで減らす
万年筆が30本あっても、ゲームが30本あっても、釣り竿が30本あっても、ラジコンが30台あっても、今遊ぶひとつ以外は見ない。
選択肢が多すぎるから、僕たちの集中力は散漫になるのです。
③ 未知のジャンルに「初心者」として凸する
経験値があるからメタ読みしてしまうのです。
だったら、自分が全く得意としない未知の領域へ飛び込めば良い。
ロープレばかりやってきた人が、急に格ゲーを始めるように、オンロードばかり走ってきたバイク乗りが、オフロードバイクを借りて泥にまみれて転んでみる。
自分が「下手くそな初心者」に戻った瞬間、あの弾けるような楽しさが蘇ります。
道楽とは、いかに「無駄」を愛せるかでしょう。
10歳の頃の自分に戻る必要はありません。そもそも無理な話です。
僕たちはもう、色々なことを知りすぎてしまいました。
ゲームの仕組みも、バイクの限界も、明日の仕事内容も、全部知っています。
だからこそ、今の自分に合わせた遊び方へダウングレードすれば良いのです。
効率化という貧乏性を捨て、あえて遠回りをして、道に迷い、くだらない出来事に全力で笑う。
昔のように、ナビや雨雲レーダーがない状態で、山道でゲリラ豪雨に遭遇してみてください。
自販機の小さな屋根だけで雨宿りしていると、同じ境遇のバイク乗りに出会って、小一時間バイクの話をする。
そこで出会った人との思い出は一生物です。
そういった出会いこそが、大人の「道楽」というものではないでしょうか。




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