万年筆は1本でいい。問題は、紙だった|書き味の本質と道具の哲学

万年筆 紙 相性 はじめの1本 ペンと紙の話

万年筆は1本でいい。問題は、紙だった|書き味の本質と道具の哲学

お世話になっております。

ピッコロモータース工場長☆プロ道楽師のまるこフランキーです。

今日は少し、僕がずっと感じていたことを話します。

それは──「万年筆は1本あれば、十分なのではないか」ということ。

もちろん、万年筆は魅力的な道具です。

書き味も見た目も、つい収集したくなる魔力がある。僕も、そうです。

けれどあるとき、ふと気づいたんです。

書き心地に満足するかどうかって、実は“紙”の問題だったのでは?と。

万年筆は“どれを選ぶか”より“どんな書き心地が好みか”が大事

国産3社のエントリーモデルで十分

万年筆の世界で「とりあえず一本持つなら?」と聞かれたら、僕はこう答えます。

「国産3社のエントリーモデルで必要十分、むしろそれがいいですよ。」と

パイロット・セーラー・プラチナの3社のペンはどれも最高。国産だから漢字を書くときの、トメ・ハネ・ハライがしっかりと表現できて、素晴らしいです。

字幅は、万年筆の良さを味わいたいのであれば、M(中字)がオススメ、手帳やノートで細かい字を書くなら、F(細字)一択。

パイロット「カスタム74」

パイロットは自動車で言ったらトヨタ、バイクで言ったらホンダ、ギターで言ったらギブソン、釣具で言ったらシマノ、当たり障りのないベーシックな性能です。

「私、みんなが使っていると言われると、急に萎えるわ。」っていう、アンチ・マジョリティなのに、結局、安牌しか引かないあなたには、パイロットが間違いない。

プリウス・ヤリス・アルファード乗りは悪いことは言わない、パイロット・カスタム74を買っとけ。(いい意味でね)

セーラー「プロフィットスタンダード」

セーラーは書き味No.1と言われている、ペン先特化型のメーカー。ガチニブと呼ばれていますが、ペン先が硬めで、スルスルとした書き味が特徴。後述するプラチナとは正反対のペン先。

特に、なんというか──「職人魂」という表現が似合う。いい意味で、ペン先だけ。あの独自のペン先から繰り広げられる書き味の濃密さ、そして全体にただよう”MADE IN JAPAN”感。

「王道の万年筆じゃイヤなのよ」とか、「書いてる瞬間をちょっと酔いたい」みたいな人には、ドンピシャです。

刺さる人には深く刺さるけど、刺さらない人には「ふーん」ってなるタイプ。バイクで言ったらスズキ。筆記具界のシュークリーム、中はとろとろ。買うときは試筆しないと絶対にダメ。

そういうクセも含めて、愛されてる。それがセーラーです。

プラチナ「#3776センチュリー」

そしてプラチナの「#3776センチュリー」僕は、1本だけ持つなら、この子かな。

センチュリーはもう──「昭和の厳格な担任教師」って感じ。

最初はちょっと硬いし、近寄りがたい。(ペン先がね)

でも、使えば使うほど「めっちゃ面倒見いいじゃん…」ってなるタイプ。

ペン先はしっかり締まってて、芯がある書き味。まるで「字をちゃんと書きなさい」って背筋を正されるような感覚。

サリサリ系なんだけど、それが気持ちいいし、ちゃんとした紙の上では、筆記時の音がスイングする。

そして何より、インクが全然乾かない「スリップシール機構」っていう、テクノロジーを積んでる。

堅物の担任教師、見た目昭和なのに中身は令和、ガラケーに見せかけて中身ギャラクシー、伊勢丹の袋みたいなエコバッグが、実はコーデュラナイロンだったみたいな。

信頼の1本を長く使いたい人には、文句なしでおすすめ。「この人だけには、ちゃんとしたい」って思わせてくれる相手。それはもう、恋ではなく、愛。

万年筆沼は、案外あっさり終わる

このあたりの金ペンエントリーモデルを、まず一本。

どれも、筆記具としての完成度は申し分ない。気張らずに書けるし、毎日使っていけるし、必要な性能はすべて揃っています。

僕が言っても説得力がないかもしれませんが、これ以上ペンを増やしても、満足度の大きな変化は望めません。あるとしても、それは“味”や“個性”の話であって、“快適さ”や“実用性”の話ではない。

書き味を左右するのは、ペンではなく紙

「このペン、カリカリする」の正体は紙かもしれない。たとえば、「この万年筆はカリカリする」「インクがにじむ」といった評価。

その多くは、実は紙との相性によって生まれているという事実に、意外と気づかれていません。

紙・インク・下敷き・環境すべてが“音色”を作る。

下敷きひとつで筆跡のニュアンスが変わるように、紙が変われば、書く行為そのものの手応えが変わる。それはもう、“音楽”に近いものです。

ギターも万年筆も、鳴りを決めるのは全体

どれだけギター本体が良くても、アンプがヘボければ音は死ぬ。

僕はこの感覚、万年筆にも言えると思っていて。

どれだけギター本体を高価なものにしても、ショボいシールドやアンプを使えば、音は途端に“軽く”なる。本体だけを磨いても、全体の鳴りは良くならない。

万年筆も同じです。

だから、紙こそが書き味の完成形。

1本の万年筆に納得しても、インクと紙と、それを支える下敷きや、机や照明、そういった環境を整えなければ、本当の“書き味”には出会えない。

なぜ僕たちは、そこまで文房具にこだわるのか

趣味だから?

たしかにそうかもしれません。けれど、それだけじゃないと思うんです。

自分を整えたい。自分を整えるための自己管理。

ただそれだけの理由で、僕らは今日も万年筆を手に取っている。

良い感情を生む道具なら、納得いくまで使いたいじゃないですか。

美しいノートに、美しい線を引いてみたい。

そうやって心を整える。それができるなら、道具にはきちんと向き合いたい。

まとめ:1本の万年筆と、紙の旅をはじめよう

これからは“紙選び”が趣味になる

ペン選びは、もう十分ではないでしょうか。

これから先は、紙との旅です。

いろんな紙に書いて、感じて、比べてみてください。

インクの出方、線のにじみ、ペン先の音。

そのひとつひとつが、自分だけの“書き味”を育てていく。

書くことそのものが、静かな贅沢になる

たった1本の万年筆を軸に、紙と向き合う時間。

それはきっと、書くことの本質に触れる、静かで贅沢な道楽です。

ではまた、どこかでお会いしましょう。

まるこフランキーでした。

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