セーラー【プロフィットカジュアルL】に見る戦略——金ペン高騰時代のスチールペン再評価

お世話になっております。
プロ道楽師のまるこフランキーです。
セーラーが2025年10月4日(土)に発売した「プロフィット カジュアルL」を楽しみに、文房具屋さんへ行ってきました。
ところがどっこい、どこにも売っていませんでした。なぜだ…。
プロフィットカジュアル無印すら売っていない状況。どうなってるのよ、セーラーの営業さん…。僕は先日のプロギアスリムミニから、セーラー信者になったのだよ。
でさ、プロフィットカジュアル無印と、カジュアル「L」で何が違うのさ、って思うじゃん?
ステンレスペン先ながら、金ペン先と同様の仕上げを施し、手作業による手間暇をかけた仕上げにより、これまでよりもワンランク上のなめらかな書き味を生み出しました。…金ペン万年筆のような書き心地をお楽しみいただけます。
つまり、ステンレスのペン先を職人さんが磨いて、さらに高級ボディにしたってことですよね。
それで価格は、13,200円(税込)──国産3社の鉄ペンにしては高い。でも、金ペンよりもは圧倒的に安い。
高いと思うか、安いと思うか、みなさんはどう思います?
僕は、安いと思いましたよ!
でもでも、万年筆スキーのみなさんは、納得してないんじゃない?
だって、ちょっと前までは、この値段で金ペン買えましたよ。
そして、僕は思う。この「中途半端」が、いまのセーラーの実力なのだと。良い意味で
職人の「技術」を生かすための、鉄ペン戦略
いま、世界的に金の価格が高騰している。もはやそれは、素材コスト高騰の問題にとどまらない。
金ペンを支えてきた研磨職人たちの仕事の機会が減っているという現実もあるのではないかと。
新品は僕らのような熱狂的なファンが追い求めるけれど、パイは僅少。パイロットや三菱鉛筆のように事業ポートフォリオは組めない。
キングダムノートのように、中古品に注目が集まっていたり、メルカリやヤフオクも万年筆がトレンドになっていたり。インバウンドで都内の文房具屋が大混雑だけれど、売れているのは金ペンではない。
もし、金ペンの生産量が減れば、職人の「手」は休んでしまう。手を止めれば技術は鈍ってしまうし、人件費は固定費だ。
いずれ「書き味の文化」そのものが失われる。そんなの嫌だ!
セーラーはそこに危機感を持っているのだと思う。技術屋さんだから
だからこそ、「プロフィット カジュアルL」では、鉄ペンであっても、研磨の手を止めない。
ステンレス製ペン先に、金ペンと同じ魂を込めるのではないでしょうか。
これは単なるコスト増加による材料の変更ではなくて、職人文化の延命措置であり、セーラーの社運をかけた「金ペンの時代〜鉄ペンの時代」への架け橋なんじゃないだろうか。
ボディは高級仕様、あえて「中価格帯」で出す理由
セーラーはこのモデルについて、こう語っている。
「ボディには高級モデルと同じ素材を使いました」
前述の通り、これはコスパとかそういう商売っ気や、見栄ではない。本気だ。
もし“安い鉄ペン”を作りたいだけなら、もっと軽くて、もっとチープな軸にすればいい。
でもそうはしなかった。
理由はひとつ。
金ペンユーザーが「降りてもいい」と思える場所を作りたかったから。
金ペンからステンレスに持ち替えたとき、失われるのは書き味だけではない。
所有する誇り、手にした満足感、あの独特の「うっとり感」も消えてしまう。
セーラーはそれを理解している。
だから、「プロフィット カジュアルL」は鉄ペンでありながら上質の感触を残した。
中級グレードがいい。それがいまのリアル。
セーラーは、完璧な鉄ペンを作ろうとしているわけではない。やろうとすれば、舶来品のように装飾を施し、セルロイドなんかを使ってレガシー感を出して、3万、4万と価格を釣り上げて行けばよい。
でも、しなかった。そこが僕はエモいと思うんだけど、いかがでしょうか。
むしろ、金の時代を知っている人たちに向けて、「金じゃなくてもうちはスゲーぜ!」っていうメッセージを込めたように思う。
金が高騰し、ペン先に贅沢を求められなくなっても、書くことへのこだわりは捨てない。
職人の手も、質感も、ちゃんと残す。
そんなセーラーの「誠実な葛藤」が、この価格と仕様ににじんでいる。
まとめ──鉄でつなぐ、金の記憶
「プロフィット カジュアルL」は、これからの日本の万年筆文化にとってひとつの転換点だと思う。
金の輝きが手に届かなくなった今、鉄がその記憶を受け継ぐ。
華やかではないけれど、静かに息づく職人の誇りがある。
──それがこの「プロフィットカジュアル L」という一本の中に、確かにある。
- セーラー万年筆「プロフィット カジュアルL」ゴールドトリム
- ペン先:ステンレス(ゴールドIP仕上げ)
- 字幅:EF/F/MF/M/B
- 価格:13,200円(税込)
- 発売日:2025年10月4日(土)
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