妻が入院すると愛妻家はポンコツになる話
妻は身体は強いが、体は弱い。
どういうことかというと、(僕より)筋肉があって、柔軟性があって、痛みにも強い。
HPはあるのだ。MPは少ないけど…。(僕ら夫婦はファイナルファンタジー派)
妻は、結婚する前、ジムで自分を追い詰め、なんか重いヤツをガシガシやって、なんかサプリを飲んでいた。糖質を取らず、鶏肉と野菜だけを食べていた。
対して、僕は痩せている。草食系を超えた草食系。
体脂肪率はボクサー級。ちょっと病的な痩せ方である。
女優さんが「特別なことはしていません。」というのと一緒で、僕は痩せる努力を一切していない。単純に『食べたい欲求』が少ないのだ。痩せている僕が僕なんだ、と脳の潜在意識が呼んでいる。たぶん、女優さんが「私は女優だから」というプロ意識が『努力を努力と認識しないこと』と似ているのだろう。(僕が痩せているのはそんなに高貴な理由じゃない)
なにかに集中していると、食べる時間が惜しくなり、気付いたら衰弱していることがある。(極限まで痩せていると体力の温存ができない。常に糖質を少しずつ入れないと動けなくなってしまう。)
そんな僕を心配した妻は、『僕をふっくらさせよう計画』を立て、毎日美味しいご飯をたんまりと作ってくれた。
そしたら何が起こったかというと・・・。
妻だけがふっくらした。
そんな妻が救急車で緊急入院した。
妻は体が弱い。
防御力、特に魔法防御力が少ない。
つまり、免疫とかバイオ系のスリップダメージをめちゃめちゃくらう。
逆に、僕はHPは少ないけど、MPはある。
妻を助けるべく、ケアルを連発し続けることができる。
だけど、だけど…。
救急車で搬送される時だけはダメだ。
今回の妻の救急搬送は、主治医の判断の下「大事を取って」の搬送だったので、厳密には救急ではないのだけれど。先生曰く「今は時期的に受け入れ先が無いからね、救急車じゃないと入院させられないんだよ。救急車、呼んでもらってもいい?」とのことで、119。
妻の保険証、お薬手帳、服用しているお薬、身の回り品…
どこにあるのか分からない。
「ここにまとめてあるから」と常日頃から言われているのに、パニクると分からなくなってしまう。僕はパニクると家族で一番ポンコツなのだ。地震のときにビビり散らかして、奇声をあげていウロウロしているところを妻に「落ち着きなさいっ!!」で一喝されたことがある。
僕のMPはレベルアップと共に勝手に増えたが、アビリティを習得する作業をしてこなかったので、ケアルしかないできない。ケアルラすら覚えていない。まさにそんな状態である。
酸素濃度なんちゃら、脈拍ほにゃらら、と救急隊員の方のサインのようなワードが機械的に僕の頭に響く。「あ、妻は死ぬのかもしれないな。」さっきも酸素を2リットルまで増加とか言ってたし。
最悪なことを考えてしまう。
妻は最悪なことを考えないそうだ。
最悪なことなど起こらない。そんなこと考えたってムダ。
そこが妻の凄いところなのだろう。(3回離婚しているのは最悪なことではないらしい。)
最悪な事態を想定し、果樹の様子を見る僕。
最高の未来を期待し、果実を採りに行く妻。
陰と陽。月と太陽。
月の僕から太陽がいなくなってしまうと、ずっと新月だ。
太陽の男なんていない。
数日後、退院しました。
看護婦さん「新婚さんですか?」
僕「いえ、8年目ですけど。どうしてですか?」
看護婦さん「奥さん、ずっと旦那さんのところに帰りたいって言っていたから。愛の力ですぐ治るわよ!って言ってやったわ。」
ありがとう、ベテランの看護婦さん。素敵な励ましの言葉いただきました〜。
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